平成30年度 秋期 システム監査技術者試験 午前II 問14
【問題14】
技術者倫理における集団思考の問題点として,アーヴィング・ジャニスが指摘した八つの兆候のうち,“心の警備” の説明として,適切なものはどれか。
集団に新しく加わったメンバなどが異議を唱える場合には,それを阻止して,集団を保護しようとする。
自分の所属している集団は失敗することがなく,または万が一失敗しても集団は存続すると考える。
他のメンバから特に意見が出されず,発言者以外の全メンバが沈黙している場合は,その意見が集団組織の一致した意見とみなす。
反対する少数メンバがいる場合は,そのメンバに圧力を加えて統一した意見にさせる。
【解説】
アーヴィング・ジャニスは、集団思考(Groupthink)の危険性を指摘し、次の八つの兆候を挙げています。
- 集団の過信(Illusion of Invulnerability)
集団は失敗しないという過信を持ち、リスクを過小評価する。
- 集団の道徳性の正当化(Belief in Inherent Morality)
集団の行動が道徳的に正しいと信じ、批判的思考を欠く。
- 外部集団に対する偏見(Stereotyping of Out-Groups)
反対意見を持つ外部者を愚かまたは悪意があると見なし、排除する。
- 沈黙の合意(Illusion of Unanimity)
反対意見が出ないことを、集団の合意とみなす。
- 同調圧力(Direct Pressure on Dissenters)
反対意見を持つメンバーに対し、圧力をかけて意見を変えさせる。
- 自己検閲(Self-Censorship)
メンバーが自分の疑問や反対意見を表明せず、抑える。
- 心の警備(Mindguards)
集団の意見と異なる情報や意見を遮断し、集団を保護しようとする。
- 合理化(Collective Rationalization)
集団の意思決定に対する批判を退け、都合のよい解釈をする。
ア: 集団に新しく加わったメンバなどが異議を唱える場合には,それを阻止して,集団を保護しようとする。
正しい。「心の警備(Mindguards)」の説明に該当します。不都合な情報や異論を遮断する役割を果たす人の存在を指します。
イ: 自分の所属している集団は失敗することがなく,または万が一失敗しても集団は存続すると考える。
誤り。「集団の過信(Illusion of Invulnerability)」に該当します。
ウ: 他のメンバから特に意見が出されず,発言者以外の全メンバが沈黙している場合は,その意見が集団組織の一致した意見とみなす。
誤り。「沈黙の合意(Illusion of Unanimity)」の例です。
エ: 反対する少数メンバがいる場合は,そのメンバに圧力を加えて統一した意見にさせる。
誤り。「同調圧力(Direct Pressure on Dissenters)」の説明です。
【答え】
ア: 集団に新しく加わったメンバなどが異議を唱える場合には,それを阻止して,集団を保護しようとする。
出典:平成30年度 春期 システム監査技術者試験 午前II 問14